「裏の谷磨崖仏」は生駒山系における石造遺物の中で、「幻の」という形容詞が最も相応しく、滅多に人が訪問しない場所に佇む地蔵石仏です。
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裏の谷磨崖仏・巨岩の東面に刻む |
かつては棚田を見下ろす場所にあり、農作業の方々を出迎えては見送り、朝な夕なに拝む日常的な風景だったに違いありません。
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倒れ込んだ笹竹と枯れた倒木の彼方に
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棚田の畦道、路盤はしっかりと残っている |
毎年、冬シーズンになるとノコギリ持参で訪問しています。2018年9月の台風21号により、枯れた松や桜の木はなぎ倒され、3mぐらいの高さに成長した笹竹にのしかかっていました。たとえ通行をジャマする笹とは言え、命あるものを切り倒すのは忍びない。枯れた木を選びながら丁寧に切り取っては除去、なんとか一人が通行できるスペースを確保しました。
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裏の谷磨崖仏地蔵菩薩立像(生駒郡平群町櫟原) |
資料によると高さは線刻された蓮台を含めて53cm、幅は36cmと小柄なお地蔵さん。(仏身45cm)型式は古式そのもので、室町時代の建立と推測されています。巨岩は奥行4mもあり、かつては遠くからもよく見えたことでしょう。
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裏の谷磨崖仏地蔵菩薩立像(生駒郡平群町櫟原) |
それにしても優しい顔つきをなさっています。目は静かに閉じておられるのでしょう。資料集には、「山中なのに花を供えた形跡が、、、」とも記されています。平成三年の出版なので、調査訪問はかれこれ三十年前のことでしょうか。
「古いものほど新しく、新しいものほど古くなる」
「裏の谷磨崖仏」は、まさにこの言葉通りを言い表しています。
撮影日[2019.03.02]
参考文献
奈良県生駒郡平群町石造文化財 平群谷(平成三年)
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